数日前、何気なくネットでニュースを見ていると、「自衛官の自殺者、歯止めかからず」という見出しを見つけ、内容を読んだ。
内容を少し抜粋すると・・・自衛官らの自殺の多い背景として、ある幹部自衛官は「駐屯地などに住み込み、規律も厳しい。海外派遣など新たな任務もストレスになっている」と分析する。命令に対する服従が根幹の自衛隊組織では、上官の指導という名の「いじめ」が見受けられるケースもあるといい・・・」と続く。そして、その自殺者は年々増えていってると言う。
私は10年ほど前、自衛官だったせいか自衛隊がらみのニュースはよく目につく。
もちろん、今回もすぐ読んだ。
でも、本当はこれだけの理由ではない。

本当は・・・

私の親しかった同期も、これまでの自殺者の中の一人だったからだ。

この記事を読んで、当時を思い出した。

・・・その知らせを聞いたのは、自衛隊を辞めてすぐだった。
自衛隊を辞めた後は、心斎橋に住み、周辺で朝から晩までバイトをしていた。そして週末は太鼓、という日々を送っていた。
そんなある日、同期の一人から連絡があった。

「日野!! 落ち着いて聞けよ。・・・◯◯が死んだ!!!」

「・・・は?・・・死んだ??・・・あいつが???」
いきなりの電話。訳が分からなかった。
この当時から、自衛官に自殺者が多いとは聞いていたが、まさか同期・・・、しかもかなり親しかった奴だ。原因は・・・「いじめ」

自衛隊というのは、ご存知、集団生活が主なので、人付き合いが慣れている、もしくは団体行動が好きという方、ある程度自分の意見が言えるという方、何を言われても気にしない方等には、そこまで苦にはならないはずだが、そういうのが苦手な方には、やや辛い。
また、ニュースの様に、先輩の指導という名の「いじめ」も存在する。私も被害に合った事があるから、よく判る。断っておくが、なにもこんな隊員ばかりでは無い。優しい先輩もいる。中には、こういう方もいるという事だ。
問題は、それに対しての関わり方。
私個人の意見だが、自殺の原因は、規律や訓練そのものよりも、精神的な弱さ、が多分大きいのでは無いかと思う。だから圧力をかけてくる先輩に耐えられなくなり、自殺を選ぶのではないかと・・・。もちろん、それだけが原因では無いと思うが、一理あると思う。
ちなみに、私も当時、嫌いな先輩がいた。あまりにも横柄な態度を取るからだ。最初は、下っ端なのでハイハイと聞いていたが、段々その態度が大きくなってくるので、同期と「あいつ、いてまうか?」と話になった。ある日、その先輩に私が呼び出されたので行くと、またしても偉そうな事を言う。頭に来て言い返すと、先輩はそれにキレて殴ってきた。あまりにボコボコ殴ってきたから、こっちもブチ切れて、パイプイスで頭を殴って応戦した事がある(笑)まあ、そのあとは仲良くなり、酒を飲むまでになった、という話。
もちろん、諸先輩方と仲良くやっていた同期もいるし、私みたいにぶつかった同期もいるし、何も気にせず差し障り無くやってた奴もいる。
でも・・・その自殺した同期は、違った。
同期でも、駐屯地の部隊によっては離れるので、1日に1回会うか会わないかという日も少なくない。
「日野ちゃん・・・おもろないわ・・・。」
私が辞める前、こんな話をしてきた。いつもニコニコしていたが、今から思えばやせ我慢してたんだなと。そしてその時話した会話が、最後だった。

自衛官の自殺者は、一般国家公務員の1.5倍だという。
日本全体では、12年連続で3万人を超しているらしい。
自殺を悪い事だとは、私は思わない。なぜなら、それは自分で選んだ道だからだ。それを否定すると、勇気を持って死んで行った同期に申し訳ない。

でも・・・、そんな命を絶つ勇気があったなら。。。と思ってしまう。